2025年7月18日、ゲーム会社のエンターグラムが、約110にものぼるタイトルの販売を同年9月30日をもって終了すると発表し、多くのゲームファンに衝撃が走りました。
長年親しまれてきた名作がなぜ姿を消すのか、会社の経営は大丈夫なのか、様々な憶測が飛び交っています。
エンターグラムの一部タイトル(戯画)の販売終了はなぜ?

今回の販売終了リストを見ると、その多くがかつての人気成人向けブランド「戯画(ぎが)」の作品を、家庭用ゲーム機向けに移植したタイトルであることが分かります。
なぜ今、これらのタイトルが販売終了となるのでしょうか。その背景には、単一の理由ではなく、会社の未来を見据えた複数の戦略的な判断が絡み合っていると考えられます。
戯画(成人向けブランド)のイメージを払拭するため
最も大きな理由として考えられるのが、ブランドイメージの刷新です。
エンターグラムは、過去の成人向けゲームのイメージから脱却し、全年齢向けの道を本格的に歩もうとしているのかもしれません。
エンターグラムの前身であるTGL企画は、全年齢向けの「TGL」ブランドと、成人向けの「戯画」ブランドという2つの顔を持っていました。
しかし、「戯画」ブランドは2023年3月31日をもって、すでに開発・販売を終了しています。
今回の販売終了は、ブランド終了から約1年半を経て、過去のブランド資産を整理する最終段階と見ることができます。
企業が将来的な成長や新たなファン層の獲得を目指す上で、過去の特定のイメージが足かせになることがあります。
エンターグラムは、VTuberの湊あくあさん主演の『あくありうむ。』のような、より幅広い層に受け入れられるタイトルの開発も手掛けていました。
こうした新しい挑戦を続けるためにも、過去のブランドイメージを整理し、全年齢向けゲームの会社としての立場を明確にすることは、非常に重要な経営判断だったと思われます。
| 補足情報 | 内容 |
|---|---|
| 「戯画」ブランドとは何でしたか? | 1993年にデビューし、『パルフェ』や『この青空に約束を―』など数々の名作を生み出した、歴史ある成人向けゲームブランドです。 |
| なぜ2023年に終了したのですか? | 公式な理由は明かされていませんが、市場の変化や会社の戦略転換などが背景にあると考えられます。 |
| 今回の販売終了との関係は? | 2023年のブランド終了に続く、関連タイトルの販売ライセンスなどを最終的に整理する動きだと考えられます。 |
| 今後のエンターグラムはどうなりますか? | 全年齢向けのオリジナルタイトルや、他社作品の移植に、より一層力を入れていくことが予想されます。 |
人件費など維持コストを削減するため
費用対効果、つまりコストと利益のバランスを見直した結果という側面も強いです。
ファンにとって名作は永遠の宝物ですが、企業にとっては販売を続ける限りコストが発生する「商品」なのです。
古いゲームの販売を続けるには、私たちが思う以上に様々な維持費がかかります。
各プラットフォーム(PlayStation StoreやNintendo eShopなど)に支払う手数料、ユーザーからの問い合わせに対応するサポート体制の人件費、そしてサーバーの維持費などです。
かつては、PCの名作を家庭用ゲーム機に移植するビジネスは非常に有効でした。
しかし、ゲーム市場が変化し、新作ゲームが次々と登場する中で、旧作が生み出す利益は少しずつ減少していきます。
やがて、その利益が維持コストを下回ってしまう「採算割れ」の状態になるのです。
今回の販売終了は、そうした採算が取れなくなったタイトルを整理し、浮いたコストや人材を、新しいゲームの開発やより収益性の高い事業に集中させるための、シビアですが合理的な経営判断であると考えられます。
ユーザー数の低下のため
市場環境の変化、つまりユーザーの減少も無視できない要因です。
美少女ゲームというジャンルを取り巻く環境は、この10年で大きく変わりました。
スマートフォンの普及により、誰もが手軽に高品質なゲームを無料で遊べる時代になりました。
ユーザーがゲームに使える時間とお金は限られており、その奪い合いは激化しています。
その中で、わざわざ家庭用ゲーム機で過去の移植作品を購入して遊ぶユーザー層は、残念ながら少しずつ減少しているのが現実だと思われます。
企業としては、販売数が一定のラインを下回ったタイトルをいつまでも販売し続けることはできません。
一部のタイトルはiMelやヒューネックスといった他の会社に販売が「移行」されますので、まだ十分に人気があり、ビジネスとして成り立つと判断されたタイトルだと思われます。
権利関係の整理がついた上で、販売を継続してくれる企業が見つかったということなのでしょう。
| 補足情報 | 内容 |
|---|---|
| 販売終了後、もう遊べませんか? | 新規での購入はできなくなりますが、購入済みのソフトは再ダウンロードが可能です。 |
| パッケージ版はどうなりますか? | お店の在庫限りとなりますが、9月30日以降も購入できる可能性があります。 |
| 他の会社に「移行」されるとは? | エンターグラムに代わって、iMelなどの別会社が販売を引き継ぐということです。 |
| なぜ一部のタイトルだけ移行なのですか? | 原作の権利を持つ会社との契約内容や、タイトルの人気度、引き継ぎ先の会社の意向など、様々な事情で決まっていると考えられます。 |
エンターグラムについておさらい
エンターグラムがどのような会社で、ユーザーからどう見られているのかを、基本情報と評判から見ていきましょう。
概要
株式会社エンターグラムは、大阪府大阪市に本社を置くゲーム会社です。
1999年8月に「エヌ・エス・ピイエンジニアリング」として設立され、いくつかの商号変更を経て、2016年4月に現在の「エンターグラム」となりました。
主な事業は、ゲームソフトの企画、開発、販売です。
PC向けの美少女ゲームをPlayStationやNintendo Switchといった家庭用ゲーム機向けに移植することを得意としてきました。
過去には成人向けブランド「戯画」も展開していましたが、こちらは2023年に活動を終了しています。
エンターグラムの評判を独自調査!
ネット上の口コミなどから、エンターグラムに対するユーザーの評判を調査しました。
その結果は、ポジティブな意見とネガティブな意見が混在する、まさにこの会社の特徴を映し出すものでした。
全体的な評判を見る限り8割近くは良い印象を持っていますが、今回の販売終了を悲しむ、残念がるファンも多くみられました。
一部ですがユーザーの声を紹介します。
このように、PCゲームの名作を家庭用ゲーム機で提供するというビジネスモデルが、多くのファンに支持される一方で、その戦略の転換点においては、ファンの寂しさや不満の声も生まれているようです。
Q&A
最後に、エンターグラムの販売終了に関して、多くの人が抱くであろう疑問にQ&A形式でお答えします。
基本的な質問から、少し踏み込んだ内容まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 販売終了するタイトルは、もう二度と手に入らないのですか?
2025年9月30日をもって、PlayStation StoreやNintendo eShopなどでのダウンロード版の新規購入はできなくなります。ただし、それ以前に購入したソフトについては、各ストアの規定に従って、引き続き自分のアカウントから再ダウンロードすることが可能です。また、お店で売られているパッケージ版については、在庫がある限りは9月30日以降も購入できる可能性があります。
- なぜエンターグラムは、販売終了の詳しい理由を公式に発表しないのですか?
企業が経営戦略に関わる詳細な理由を公にしないのは、実は珍しいことではありません。今回の件は、原作の権利を持つ会社との契約内容や、販売を引き継ぐ会社との交渉など、外部には話せない複雑な事情が絡んでいる可能性が高いです。中途半端な情報を出すことでかえって混乱を招くことを避けるため、あえて「販売終了」という事実のみを発表しているのだと考えられます。
- 販売が「終了」するタイトルと、他社に「移行」するタイトルの違いは何ですか?
「終了」は、エンターグラムによる販売が完全に終わるタイトルを指します。一方、「移行」は、『戦国†恋姫』シリーズのように、iMelやヒューネックスといった他のゲーム会社が販売を引き継ぎ、今後も販売が継続されるタイトルです。この違いは、原作の権利を持つ会社との契約内容、タイトルの人気や将来性、そして引き継ぎ先企業の戦略など、様々な要因によって決まっていると思われます。
- 今回の大量販売終了で、エンターグラムの経営が「やばい」状況なのでしょうか?
この件だけで、直ちに経営危機に陥っていると判断するのは早計です。むしろ、これは経営を健全化させるための「選択と集中」という前向きな戦略と捉えることができます。採算が合わなくなった事業を整理し、その分の経営資源を『ゴーヘルゴー つきおとしてこ』のようなオリジナル新作や、今後有望な事業に振り分けるためのリストラなのです。企業が長く存続していくためには、こうした新陳代謝が必要不可欠なのです。
- 2023年の「戯画」ブランド終了と、今回の販売終了は直接関係があるのですか?
はい、非常に強い関係があると考えられます。2023年3月31日に「戯画」ブランド本体の開発・販売は終了しました。しかし、それ以前に発売された「戯画」原作の家庭用移植版は、エンターグラム名義で販売が続いていました。今回の販売終了リストには、そうした戯画関連作品が『この青空に約束を― Refine』や『パルフェリメイク』をはじめ、多数含まれています。これは、ブランド終了から約1年半の期間を経て、残っていたライセンス契約の満了などに伴い、関連製品の販売を最終的に整理する、計画的な動きだと解釈するのが最も自然でしょう。








