テレビで見る甲子園のスタンドに、以前より空席が目立つと感じることはありませんか。
春のセンバツではその傾向が顕著で、夏の大会や人気の阪神戦でさえ、時折寂しい光景が見られます。
甲子園がガラガラな理由は?選抜高校野球や阪神戦など

高校野球の甲子園大会、特に春のセンバツで観客席の空席が目立つことがあります。
阪神戦でも満員にならないケースも。
選手たちの一生懸命なプレーを、もっと多くの人に見てもらいたいですよね。
チケット制度の変更と価格高騰が大きな壁になっているため

甲子園の観客が減ってしまった最も大きな理由の一つは、チケットの仕組みが大きく変わってしまったためです。
以前は、球場の窓口で当日券を買い、空いている席に自由に座れる「自由席」が中心でした。
外野席は無料で、気軽に立ち寄ることができたのですが、コロナ禍をきっかけに、すべての席が前もってインターネットで買う「全席指定・前売り制」に変わりました。
この変更によって、「今日天気が良いから、ふらっと甲子園に行ってみよう」という気軽な観戦が難しくなってしまったのです。
また、チケット代も大幅に値上がりしました。
ネット裏の中央指定席は以前の倍近い4,200円になったこともあり、これまで無料だった外野席も700円のチケットが必要になり、高校生がお小遣いで見に行くのは少し大変ですよね。
今のチケットは1日通し券なのに、一度球場を出ると再入場ができないルールになっています。
そのため、お目当ての1試合だけを見て帰ってしまう人が多く、後の試合ではその席がずっと空席のままになってしまうのです。
以前は帰る人がいれば、その分だけ新しくチケットを追加販売していたのですが、今はその仕組みがありません。
これが「チケットは完売しているのに、スタンドはガラガラ」という不思議な光景を生み出す原因なのです。
変更点 | 以前の仕組み | 現在の課題 |
---|---|---|
販売方法 | 当日券・自由席が中心でした | ネット前売り・全席指定になりました |
価格 | 外野は無料で、内野も手頃でした | 全体的に高くなり、行きにくくなりました |
再入場 | 可能で、一日中楽しめました | 原則できず、途中退場が多くなりました |
観客層 | 誰でも気軽に立ち寄れました | 計画的に購入するファンが中心です |
空席の扱い | 追加販売で席が埋まりました | 試合が進むと空席のままになります |
観戦環境やファンの意識が変化しているため

球場に足を運ぶ人が減っているのは、チケットの問題だけではありません。
観戦する環境や、私たちファンの考え方が変わってきたことも影響していると考えられます。
まず、気候の問題はとても大きいです。
夏の甲子園は「酷暑」とも言われるほどの暑さで、熱中症の危険と隣り合わせで、逆に春のセンバツは、雪が降るほど寒い年もあり、屋外での長時間の観戦は体に応えます。
快適な部屋でテレビ観戦を選ぶ人が増えるのも、自然なことかもしれません。
また、いつの時代も甲子園を沸かせる「スター選手」の存在は大きいものです。
松坂大輔投手や大谷翔平選手のような、誰もが注目するスター選手がいる大会は自然と観客も増えますが、そうしたスターが不在の年は、どうしても客足が伸び悩む傾向があるようです。
対戦する学校の組み合わせによっても、観客の数は大きく変わります。
私たちの休日の過ごし方が多様になったことも、一つの要因だと思います。
昔に比べて、野球観戦以外にもたくさんの楽しいエンターテイメントがあります。
その中で、時間とお金をかけて甲子園まで行くという選択肢の優先順位が、相対的に下がっているのかもしれません。
コロナ禍を経て、「どうしても行きたいイベントには行くけれど、迷うくらいならやめておこう」と考えるライトなファン層が、球場から少し遠ざかっている可能性も指摘されています。
観戦の側面 | 昔ながらの魅力 | 今直面している課題 |
---|---|---|
気候 | 夏の風物詩というイメージでした | 熱中症リスクや春の寒さが深刻です |
応援 | 郷土色豊かな応援が名物でした | 応援のあり方自体が議論になることもあります |
選手 | 地元のヒーローに熱狂しました | スター選手の不在が寂しい時もあります |
観戦スタイル | 一日中球場で楽しむのが普通でした | 特定の試合だけ見る人が増えました |
競合 | テレビ中継が主なライバルでした | 多様なエンタメと時間を奪い合っています |
大会運営の構造的な問題が根底にあるため
甲子園の空席問題の根っこには、高校野球というイベントが持つ、少し特殊な事情も関係しているのです。
それは、高校野球が「教育の一環」として行われているということです。
プロ野球の阪神タイガースの試合は、ファンに楽しんでもらい、チケットやグッズで収益を上げる「興行(ビジネス)」です。
だから、ファンクラブを作ったり、様々な企画チケットを販売したりして、お客さんに何度も来てもらうための工夫を凝らしています。
一方で、高校野球はあくまでも学校教育活動です。
そのため、過度な商業利用はしないというルール(学生野球憲章)があります。
もちろん、大会を運営するには交通費や宿泊費など莫大なお金がかかるので、チケット収入は不可欠ですが、ビジネスとして利益を追求することに積極的になりにくい構造があるのです。
その結果、チケットの値上げという直接的な方法で収入を確保しようとしますが、それがかえってファン離れを招くという、難しい状況に陥っているのかもしれません。
ファンの利便性よりも、運営側の事情が優先されているように感じられる部分もあります。
例えば、1日に2回チケットを買わないと全試合見られない「二部制」が導入されたこともありました。
こうした積み重ねが、ファンの「甲子園に行きたい」という気持ちを少しずつ削いでしまっている可能性は否定できないと思います。
比較項目 | 高校野球(甲子園大会) | プロ野球(阪神戦など) |
---|---|---|
主な目的 | 教育の一環とされています | 興行、つまりビジネスです |
チケット戦略 | 全席指定で、値上げ傾向にあります | 多様な価格帯や企画チケットがあります |
ファンサービス | 限定的だと言えます | ファンクラブやイベントが多数あります |
収益の考え方 | 運営費や野球振興が目的です | 事業としての利益を追求します |
観客への配慮 | 再入場不可など課題も指摘されます | 快適な観戦体験を追求しています |
個人的に思うこと
甲子園のスタンドに空席が目立つ光景を見るたびに、私は少し寂しい気持ちになります。
単に「高校野球の人気がなくなった」という単純な話ではなく、時代の変化に高校野球という伝統的な文化がどう向き合っていくかという、大きな課題の現れなのではないかと感じています。
チケットの値上げや全席指定化は、安全な大会運営や収益の安定化という面では、理解できる部分もあります。
そのために、かつて甲子園が持っていた「誰もが気軽に立ち寄れるお祭りのような雰囲気」が失われつつあるとしたら、それはとても残念なことです。
特に私が心配なのは、子どもたちの姿をスタンドであまり見かけなくなったことです。
高いチケット代や複雑な購入方法は、子どもたちが野球に興味を持つきっかけを奪ってしまっているのではないでしょうか。
今日の空席は、10年後、20年後のファンを失っていることと同じなのかもしれません。
ちなみに吹奏楽部がひどいとの噂もあるようです。

Q&A
- なぜ春のセンバツは夏より観客が少ないのですか?
それにはいくつかの理由が考えられます。まず、夏の大会は全国の球児が夏休み期間中に戦いますが、春はまだ学校や仕事がある平日も多く、観戦しにくいのです。また、気候も不安定で、とても寒い日があることも影響します。夏の大会は47都道府県すべての代表が集まるお祭りのような雰囲気ですが、春は選考委員会によって選ばれた学校が出場するため、夏ほどの盛り上がりに欠けると感じる人もいるようです。
- チケットはなぜあんなに高くなったのですか?
2022年の夏から大幅に値上げされました。主催者側からハッキリとした理由は説明されていませんが、コロナ禍で減ってしまった収入を補うためや、警備や運営にかかる費用が増えていることなどが背景にあると考えられます。全席指定になったことで、席を管理するコストが上がった可能性もあります。昔は無料だった外野席まで有料になったので、特に高く感じてしまいますよね。
- 全席指定なのに「チケット完売」と表示されることがあるのはなぜですか?
とても不思議に思いますよね。これは、その日のチケットが前売りで全て売り切れたことを意味しています。でも、チケットを買った人全員が、朝から晩まで全試合を見るわけではありません。例えば、第1試合だけ見て帰る人の席は、第2試合以降ずっと空席になってしまいます。以前の自由席の時代は、帰る人がいればその分、新しく入場券を売っていましたが、全席指定ではそれができないため、「チケットは完売しているのにスタンドはガラガラ」という現象が起きてしまうのです。
- 阪神戦もガラガラになることがあるって本当ですか?
今では信じられないかもしれませんが、大人気の阪神タイガースでも、昔は甲子園がガラガラだった時代が長かったのです。最近はほとんどの試合が満員に近いですが、対戦相手や曜日、天候によっては、ごく稀に観客が3万人を切るような、少し寂しい試合もあります。ただ、高校野球の空席問題とは、人気や運営の仕組みが違うので、少し性質の違う話だと言えるでしょう。
- 運営側は空席問題をどう考えているのですか?改善策は?
日本高等学校野球連盟(高野連)は、「自由席だった頃と今の全席指定の入場者数を単純に比べるのは難しい」という見解を示しています。また、ファンが楽しめるように企画シートを増やすなどの取り組みもしていると説明しています。しかし、ファンからは「一度外に出ても再入場できるようにしてほしい」「チケット価格を見直してほしい」といった声が多く上がっているのも事実です。高校野球は「教育の一環」という大切な理念があるので、ビジネスとのバランスを取りながらファンが喜ぶ改善策を見つけ出すという、とても難しい舵取りが求められているのが現状だと思います。